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コラム

終身雇用の背景|「安定」と引き換えにしたもの

2020-07-11

終身雇用という制度について考えてみます。

実際には永遠に続く制度などなく、時代に応じて変化していくものだということがわかります。

終身雇用が導入された頃

終身雇用という制度が定着したのは、戦後、1960年代になってからだそうです。

この流れは大企業から始まり、やがて中小企業へと広がっていきました。

思ったよりもずいぶん最近です。

会社は永遠ではない

なお、「終身」とはいいながら、会社はずっと存続し続けるものか?というと、決してそんなことはありません。

実際、企業の寿命は23.9年(2018年、倒産企業の平均。東京商工リサーチ調べ)です。

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20190131_04.html

業種によっては短い場合があり、サービス業、情報通信業、金融業になると、企業の平均寿命はおよそ11年から17年程度になります。

新卒で創業したての会社に入社した場合、おそらく50代を目前にした頃に会社が倒産している可能性があるわけです(もっと早い場合もある)

仕事は永遠ではない

なお、仕事がずっとあるか?というと、そんな保証はどこにありません。

確かに、鉄鋼業で鉄を作る、という仕事は変わらなかったとしても、その製造過程は変わっていくでしょうし、工場が移転する場合もあるでしょうし、使う機材が変わることだってありますし、そもそもその業種が置かれている経済環境も変わります。

仕事自体が必要なくなる場合すらあります。

昔は需要があった仕事なのに、技術革新や需要の減少などの結果、仕事が成り立たなくなることは十分あり得ます。

現在の時点で、いまの仕事が将来においても必要とされるかどうかは、正直なところわからないものです。

現在不人気な仕事でも、将来はもてはやされている場合だってあります。

戦後第一世代が生きた時代

ここで、1945年ごろに生まれた世代を戦後第一世代としておきます。

この世代は、中学卒業時には「金の卵」と呼ばれて集団就職で都会に出た人が多かった世代です。

この世代が60歳を迎えたのは2010年頃までです。

これは結果論でしかありませんが、それまでの間には幾度かの不景気もありましたが、空前の好景気も何度か訪れていました。1960年ごろにできた会社に入社している場合は、その企業は1990年頃までは平均して存続していたことでしょう。

その後、会社が倒産したことによって再就職している人もいるかもしれませんが、経済的基盤をそれまで築いて土地と家を持っているとするならば、なんとか生き抜くこともできたと思われます。

年金も社会保障も支給されるまでに減額されたかもしれませんが、それでも日本の人口はまだ多いので、その後の世代に比べると多い金額を受給できる可能性が高いです。

戦後第二世代

では、この第一世代の子供たちの場合はどうなるでしょう?(戦後第二世代としておきます)

生まれた年代は1960年代後半から1970年代です。

これもまた結果論でしかありませんが…

仮に1965年に生まれた人の場合、現在の年齢は55歳、就職する頃は日本の景気が上がっていく時代であり、バブル崩壊を経て低迷していく時代を生きたことになります。

1975年に生まれた人の場合は、現在の年齢が45際、就職する頃にはすでに不景気に突入しています。

この両者とも、定年の年齢は65歳に引き上げられています。

年金は支給額が減少し、支払う社会保障費については値上げの影響を受けます。

定年まではあと10年から20年ほどありますが、この世代の老後には暗雲が漂っていると思われます。

というのも…

経済は基本的に過去の時代よりも複雑化しており、仕事の質が変わっているのに、社会の仕組みは変わらないままで、特に2000年代に入ってから企業は採用を絞ったことによってどこの組織においても若手が少なくなっているために、仕事量は多いのに給料的には恵まれない、という待遇を受けていたり、その後も不景気で給料が上昇していかなかったり、そもそも就職難で正社員ではなく非正規社員扱いの仕事を続けざるを得なくなった人も多く、将来の貯蓄もできなかった人も多くいるからです。

老齢人口は増えているのに、働く人の負担は過去の時代よりも増えていくばかりで、しかも自分が老人になったときにはさらに大変な状況が訪れることは自明となっています。

さらに、年金の支給額も減っているかもしれない…

戦後第一世代の介護も待っています。

お金がないのにやることだけはたくさん任されることになってしまう!

大変な状況に置かれています。

個人と社会の安定

終身雇用がもたらした効果は、個人には将来の生活を見通せることを背景に生活の安定に繋がった、という面です。

よほどの失敗をしたり事情が生まれない限り、会社で働くことができる、という前提で住宅ローンを組んで家を建てたり計画的に人生を設計することができるようになりました。

社会としても、雇用が安定するので経済的に潤うし、治安も安定するし、企業としても労働力を安定して労働力を確保できることになります。

貧富の差が少ない、と言われた理由

いわば、この「安定」によって、日本人は豊かになることができた、と言えるでしょう。

働いてさえいれば、なんとかなることを実現できた社会なので、会社に就職し、仕事を普通にしていれば、人並みの給料が得られ、それを元に人生を設計することができますよね?

その結果、働くことによって極端に貧しい人が少ない社会を作ることができました。

一方で、極端に経済的に豊かな人も中にはいますが、税制をコントロールすることによって税金として納めさせることで対応してきました。

突出した才能

ただし、問題もあります。

終身雇用だと、会社組織内ではことを荒立てないでいることが得になります(ミスが減点になるような評価基準だから)

こうした傾向が続いていくと、次の時代のための視点を変えた新しい発想や、それを実現させるという仕事は、しにくくなります。

こうなってしまうと、例えば突出した行動が取れない状況になるので、新しい発想が尊重されなくなっていきます。

まさに出る杭は打たれる状態です。

それに、あまりリスクを負ってでも新しいことにチャレンジする理由が無くなります。

こうなると、新しい画期的なものが生まれにくくなってしまいます。

安定の変わりに、異質なものを排除するようになり、社会は柔軟さを失ってしまった、と言えるでしょう。

今後の世の中

なお、今後の世の中では、この雇用モデルは似合わないとされます。

どういうことか、というと…

必要とされる技能の変化が激しいので、常に新しい人材を採用できた方が企業には都合が良いため、雇用は流動化していた方がいいからです。

雇用される側としては、今後の世界は能力の向上を常に求められるようになりますので大変な時代であり、終身雇用は存在しなくなる可能性が高くなります。

もっとも、採用と解雇が柔軟に行える状態で、失業しても次の職がすぐに見つかり、自己研鑽により給料が上がっていくのであれば、それでも問題はないのかもしれませんが…現実はそうそう簡単にいくものでもありません。

生き方モデルの転換が必要?

私たちは、それぞれが今後の生き方をどうするかを決める必要が出てきます。

少なくとも、それまで社会にあった「当たり前」とされる基準を満たすことは、かなり難しいです。

安定して働く、ということは、1社でずっと働き続ける、という意味ならばすでに不可能ですし、生き方が多様化しているので結婚して子供を持つことが普通でもない時代となっています。

みんなで頑張って受験競争をして、良いと呼ばれる学校に努力して入学し、一流企業に入社して定年まで働く(その間に一生の伴侶を見つけ、結婚し、子供をもうけ、家を手に入れて幸せに生活する)

これは、無理です。

できても、ほんのごく一部の人にしかできないことです。

この夢をずっと見続けて、これを目指していくことが本当に幸せなのか?

これを目指すことを強要されることは、むしろ幸せと言えないのではないか?(実現可能性が低いことをやらせても、実現できなかった人を増やしてしまうことになる)

そもそも、この通り生きても、経済の前提が変わっているかもしれないし、仕事が将来あるかどうかもわからないのに??

私たちは、いろんな面で、考え方を変えていく必要があります…

(一気にそれを迫られていることもまた、問題をより深刻にするかもしれませんけど)

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