目次
日本社会の特徴
日本社会は家長制に基づく家の概念が強い社会だったようです。
社会の最小の単位は個人というよりは家が重視されており、家を絶やさないためにまったくの他人を迎え入れて家督を継がせることも行われました。
また、恥の意識があり、よく「家の恥だ」という言い方をしたりもします。
誰しも言葉にはうまくできませんが、確かに家という物があり、家の名誉が個人の名誉よりも重視されていた時代も確かに過去に存在していたようです。
日本における民法制定時の話
明治維新後、日本は近代国家を整備する際、西欧各国の考え方をつぎはぎで導入することによって出来上がりました。
民法については、ドイツ的な民法を参考にしました。
その際、個人の単位をどこにおくか、ということが問題になったようですが、当時の現実として日本では西洋でいう個人が育っておらず、そのため法律的に最小の単位を家に設定していたようです。
(戦後は家ではなく、夫婦が主体となっているようです)
個人は確立しているのか?
ここで問題となってくるのは、日本では個人が成立しているのかどうか、です。
西洋でいう個人というのは、自分で考え、自分で判断し、自分で選択し行動し、結果については自分で責任をとる、というものです。
個人、あるいは個の確立が、欧米では徹底しており、教育の段階でそれが重視されるようです。
一方、日本の場合は、西洋でいう個人が成立しているのか、というと、いまだにそうとは言えない面があるかと思われます。
日本社会の特徴
では、日本社会の特徴とはなんでしょう?
おそらく、ですが、個人が成立していない代わりに、家という概念が影響力を持っていたのかもしれません。
集団行動に重きをおいて、他人の目を気にしながら、他人に迷惑をかけないように生きていく、という考え方が強いのは、個人主義的な考え方とはまた違うものです。
日本企業の雇用形態の特徴 ジョブ型とメンバー型
日本における雇用形態は、メンバー型と言われます。
これは、一つの仕事に対して仕事が主軸となって集まり、終わったら解散する形態(ジョブ型)とは違います。
メンバー型の場合、雇用は保証され、会社に就職する意識が強いです(終身雇用の影響が強かった時代には就社?でもあった)
ジョブ型の場合、雇用は流動的であり、解雇がしやすくなっています。
仕事単位、個人の能力単位での仕事が基礎的な考え方で、個人の能力を生かしやすいとされています。
弊害
メンバー型雇用形態は、日本の高度経済成長の時代に効果を発揮しました。
給料が上がっていく前提で労働者は将来の生活設計を立てることができましたし、会社に所属さえしていれば生きていくことができる世の中でした。
職業が不安定でないということは、社会不安を減らし、社会の安定に寄与した面もあります。
企業は、労働力をそうして抱えることによって人材を確保でき、それを教育することによって利益を上げていくことができるので、学生の新卒採用が重視されます(長く働いてもらった方が得になる)
ですが、経済状態は変わりました。
人材を多く抱えることは負担になり、労働者にとっても、同じ会社で働き続けることがリスクにさえなるようになりました(将来まで企業があるかどうかすら分からない)
こんな中で雇用は流動化していないとなると、個人の能力を発揮することがしにくくなるし、企業に負担も大きい、ということで、現在、日本におけるジョブ型雇用を導入する必要性が語られるようになりました。
個人の独立なくして一国の独立なし
冷静に考えると、会社が家の役割を果たしていたのではないか?とも言えます。
家に属し、家のために働くという関係は、どこか個人と家の関係に似ています。
会社は定年まで所属する場所で、顔見知りが大勢いて、そんな中で働いていく、というのは会社が決まったメンバーで構成された家そのものだ、とも思えます。
なお、価値観が多様化したため、家の概念は衰えたと思われます。
経済の環境が変化したため、会社という家も変化を余儀なくされました。
「さあ、これからは個人でがんばれ!」
えっ?
用意できてるでしょうか?
民法制定時から100年あまり経過しましたが、日本人が個人として成長したかどうかが問われる場面が不意に訪れているということになりそうです。
(最後に、明治の著名人の言葉を引用しておきます)
「一身独立して一国独立す」 福沢諭吉
個人を確立することの重要性が今後ますます高まっていくことでしょう。
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