目次
情報を伝える、ということ
情報を伝えるには、方法が限られます。
おそらく、これ以外には他に方法はなく、あったとしてもそれは一般的ではありません(超能力者同士ならテレパシーで通じ合うことができる、という場合は考えません^^)
- 直接会って伝える(1×1、1×多数)
- 手紙や文字で伝える(1×1、1×多数)
- 電話で伝える(1×1、1×多数の場合もある)
- 録音で伝える(1×1、1×多数)
- ジェスチャーで伝える(1×1、1×多数)
- 映像で伝える(1×1、1×多数)
- 暗黙の了解で伝える(ほとんど1×1)
自分が伝えたいことに対して、相手に合わせてどんな方法を用いるか、ということで、使わなければいけない方法や、注意を払う場所が違ったりもします。
いかに情報を伝えるか
1番なのは、自分の思っていることが相手にそのまま伝わることです。
ですが、実際には自分の意図の10パーセント伝わればいい、というくらいでしかありません。
しかも、自分が発したことに対して、相手がまったく違う反応、解釈をしてくる、ということもあります。
こうしたことも踏まえながら、いかに情報を伝えるか、ということが、とても大事になります。
間違ったことを伝えたくて発信する場合も確かにありますが、ほとんどの場合、自分が伝えたいことを伝えたくて、誰かに何かを話したり、文字を書いて送ったり、映像で伝えようとしたりしています。
直接民主制の古代ギリシア
これは1つの例ですが、人々の意思を反映させるために、古代ギリシアでは集会場に集まり、それぞれ権利を持っている人が直接そこに参加し、意思決定を行う、ということが行われていました。
これをもし1000万人規模で行え、と言われたら、できるでしょうか?
1000万人を収容できる建物はまず建設不可能ですので、広場に集まってもらうことになるでしょうが、そこで直に何かを伝えることは、本当にできるのか?
少なくとも、直に語りかける、という方法では難しくなってくるのではないか、と思います。
音声が伝わるかどうか、ということもありますし、落ち着いて聞いてもらえるか、という問題もあります。
おそらく、伝えようとすることがきちんと伝わらない原因が、ここに表れています。
情報は劣化する
情報は、いろんな原因があって劣化していきます。
メッセージはメッセージでしかないはずなのですが、それが外部のノイズによって、徐々に劣化します。
また、内容も発信者の意図どおりには伝わらないということも起こります(生演奏ではキレイな音だったのが、伝えようとする間に騒音で聴き取れなかったり、ノイズが乗りやすい波長の短い電波帯を使った方法〈短波ラジオなど〉で伝えられると、おそらく、その良さが無くなってしまいます)
劣化していくと、元のものではないものになるので、相手には伝わりにくくなります。
内容を受け取る場合に影響するもの
人を目の前にして何かを伝える場合、相手には、伝えている自分の姿が映っています。
その人がどんな人なのか、ということも、メッセージと共に相手に伝わり、相手はそれを総合的に判断して内容を判断します。
信頼関係が基礎になければ、物事は進まない、というのが現実です。
信頼を得るには、相手が自分を裏切らない、相手が自分にメリットを与えてくれる、相手が自分に損害を与えてもそれを許せると思える何かがある、ということが大事です。
この信頼を作るのは、だいたい時間がかかります。
アリストテレスの弁論術
【アリストテレス の弁論術】
- エトス…(伝える側の)人間性、知性
- パトス…(受け取る側の)感情
- ロゴス…言葉、伝えたい中身
まず「伝える側が信頼できるかどうか」が大事で、さらに「情報を受けとる側の感情・解釈の仕方」が大事で、そしてそもそも伝えようとしていることの中身がきちんとしているかどうか、ということで、意図が伝わるかどうかが決まることになります。
なので、発信する側は相手を裏切ったりするようなことはしない方がいいでしょうし、相手の利益を考えた配慮や行動をしていた方がいいでしょう。
そして、相手の感情を大切にする必要があります(相手が何を好み、何を嫌うのか、ということから始まり、好きだと思うものにアプローチする)
それができていれば、伝えようとする内容が生きてくることになります(ただし、それが論理的に破綻しておらず、きちんと納得できるものであれば)
ニュアンスを伝えられるか?
どうしても直に何かを伝えられない、という場合、メディアに頼ることになります。
ですが、メディアでは「何か」が伝えられない、ということが起こります。
「何か」とは何か?
それは、ニュアンスのようなものです。
情報には、情報そのもののほかに、それとは違った付随する情報が含まれていて、それがメディアでは伝わらない(カットされてしまう)ということになります。
情報通信技術が発達し、高度化していった背景には、よりキレイに、より正確に、より伝わりやすく、を求めることを通じて、このニュアンスまでも伝えようとしてきた軌跡だ、ということもできるでしょう。
アウラの喪失
メディア学の権威であるヴァルター・ベンヤミンが書いた本の中には「アウラの喪失」という概念が出てきます。
(アウラとは、英語でいうオーラのこと)
どんなに精巧なコピーを作っても、それはコピーであり、アウラ(というしかないもの)が伝わらない、という状況が生まれるとされます。
確かに、偉人の本を読んで感銘を受けたとしても、その偉人から直接レクチャーを受けた方が、さらに感銘を受けられるはずです(内容は同じはずなのに…)
それが起こるのは、アウラが伝わるから、としか言えない部分があるはずです。
現実には、直接会うことができる人は限られており、現代においては情報通信技術を使って「本人ではない何か」に触れることによって相手と接するしかありません。
ですので、アウラまで伝えようと努力しない限り、伝えたいものが伝わっていかない、ということになります。
ですので「表現の方法を磨く」ということは、とても大事です。
(なお、アウラの喪失については、私が20年ほど前に学校で習ったことをベースに書いています。私の解釈が違っている可能性もあるので、気になる方はご自分でお調べいただくことをおすすめします)
伝言ゲーム
何かを伝達していくと、伝わる間に本来の意図から離れてしまうことが起こります。
それをコントロールすることは大変なことでもあります。
権力でそれをすると自由は制限されます。
コントロールしようとしないならば、勝手な解釈がまかり通ることになって、言論が歪んで伝わることによる弊害が生まれるかもしれません。
相手に何かを伝えることの怖さも、可能性も、ここにあります。
相手に誤解されても、それを恐れてはいけません。
できるだけ意図が伝わるように努力しながら、自分を知ってもらい、信頼してもらう、これを通じて、自分のメッセージの意図を知ってもらう、ということしか、おそらくできない…
伝える、ということは、実はものすごく大変な行為です。
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