【書評】『IT全史』 中野明 著

2021-02-20

通信の歴史

人間は昔から、情報を伝えるという作業をしてきました。

古くはのろし、という方法もありました(案外伝達速度が早く、ネット記事で情報を集めたところ、時速159kmくらいの伝達速度があったようです)

のろしの場合、煙が上がったことを見て、それで情報を伝えることになります。

遠方になればなるほど中継拠点をいくつか用意しておく必要がありますし、事前に煙の上がり方などについて情報を共有しておく必要はありますが、その基盤ができていれば、情報伝達手段に乏しい時代において威力を発揮したものと考えられます。

今回ご紹介する『IT全史』では、19世紀ごろのフランスで利用されていた腕木通信(うできつうしん)という方法から記述が始まっています。

この通信方法は一種の手旗信号のようなもので、3本の棒をロープで形を変えたりして暗号にし、それを望遠鏡によって目視で確認することによって次の拠点が情報を受け取る、という形式だったようです。

その後、電気を利用した通信が行われるようになります。

初期

電気を利用し始めた初期の通信は、実はデジタル方式だったようです。

モールス信号は、電気が流れる・流れない、という情報を符号にして、それを伝えています。

このモールス信号の時代がやがて、電話という形になっていきます(電話を発明したのはグラハム・ベルであり、電話というサービスを事業化したのはエジソンということになるようです)

ラジオ放送が開始されるようになると、民間のラジオ曲がいくつも誕生し、生活のあり方が変わっていくことになりました。

そしてテレビ放送の時代になっていきますが、サービスのあり方としてはラジオ放送で得られたノウハウをテレビ放送網の拡大に応用したこともあり(事前にサービスエリアを整備しておく)サービスが安定して早く広がっていくことになったようです。

アナログ時代

テレビ放送が広まっていく時代というのは、戦争も終わり、工業化がさらに進んでいく時代です。

アナログ時代になると、メディアを再生する装置を個別に用意する必要があります。

コンピュータのように同じハードウェアの上でソフトウェアを入れ替えていくつもの機能を実現できるわけではありません。

なので、ラジオやテレビの生産をしても、ラジオはラジオだけ、テレビはテレビだけを伝えることができるだけです。

この特徴を踏まえ、良い品質のものを安く大量生産して販売する、という方法により、日本企業は大きな利益を得ることになります。

この時代は1980年代末、あるいは1990年代のはじめごろまで続きました。

デジタル時代

その後、コンピュータの性能が飛躍的に向上していき、デジタル機器の価格は下がっていき、性能は向上していきます。

パーソナルコンピュータが一般家庭にも普及していき、電子メールやSNSといった形で連絡を取ることが一般的になっていきます。

また、携帯電話の性能も向上し、やがてスマートフォンが登場します(Apple社のiPhoneが発売されたのは2007年)

現在では、多くの人がスマホを所有するようになり、スマホのアプリで連絡をとったり、音楽を聴いたり、動画を視聴したりするようになりました。

日本企業が衰退した理由

デジタル時代になると、たとえば音楽を聴くためにCDを買ってきてCDプレイヤーにセットして…という作業が必要なくなります。

他にも、動画を見たいと思ったら、スマホがあればテレビは必要なくなります。

このように、ソフトウェアさえ切り替えれば同じハードウェアで動作する、というのがデジタルの特徴です。

テレビはテレビの機能しかなく、ラジオを聴いたりすることはできませんし、テレビでスマホのようにオンライン銀行を利用してお金のやりとりをすることもできません。

日本企業はアナログ時代からデジタル時代になっていく世の中で、市場を押さえることができなかった、ということになります。

もちろん、デジタルの可能性を感じていた人はいるはずですが、変化のスピードに対応できず、その間に海外(主にアメリカ)から出てきた新興勢力に市場を奪われてしまった、というのが実情かと思います。

AI時代の死角

今後は人工知能(AI)の時代が訪れるとされています。

とはいえ、AIには不得意な分野があるようです。

それは、突発的な予期せぬトラブルに弱い、ということです。

決まったこと、単純作業をやらせればAIは人間よりも圧倒的なスピードで大量の仕事を処理することができるのですが、プログラムされていない事態が起きた場合、それは想定外のことになってしまうため、正常な判断をしてくれるという保証はありません。

これから社会はどうなるのか?

また、自分で調べる必要がない、ということで人工知能に頼りっきりになる、という状況がすでに出てきていますが、これは人間社会を大きく覆す可能性もあるかも知れません。

自らの意思を人それぞれが持ち、自らの責任で生きていく、という前提が社会を作っているのに、自ら考えることを放棄して機械に依存することになると、社会の前提は崩れ、さらにAIが吹き込んだ誤った情報に人が支配される、ということも起こるかも知れません。

まとめ

人が生まれて生きていくことと、人が生まれた社会の状況、時代といったものは大きく関連します。

もしスティーブ・ジョブズが10年早く生まれていたり、10年遅く生まれていたら、タイミングを逃して成功を手にしていない可能性があります。

目の前にある状況をいかに汲み取り、活用していくか、ということが、通信だけにとどまらず生きていく間に持つべき視点だと思われます。

まだ手付かずの情報が有る限り、そこに新たなチャンスが眠っていて、それを活用して人の役に立つように加工し使いやすい形にして提供できた人が、大きな利益を得るかも知れません。

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