映画「クレイジー・ハート」にみる人生のやり直し方

2021-04-09

人生のやり直し方を、映画を例に考えてみたいと思います。

映画「クレイジー・ハート」にみる人生のやり直し方 

結論

  • ものの見方を変える
  • 大事なものに気づく
  • 自分の本当の感情に素直になる
  • 自分自身を受け入れる
  • 少しずつでいいので行動を変えて、それを継続していく

映画「クレイジー・ハート」とは? 

作品概要

2009年公開のアメリカ映画(日本公開は2010年)

第82回アカデミー賞において主演男優賞・歌曲賞を受賞、助演女優賞ノミネート

主演のジェフ・ブリッジスは、5回目のアカデミー賞ノミネートとなった本作で初めての受賞となった。

登場人物

  • バッド・ブレイク(主人公、歌手)
  • ジーン(新聞記者の女性)
  • ウェイン(主人公の友人、バーの経営者)
  • トミー(主人公の元で腕を磨いた弟子)

ストーリー

かつて一世を風靡したシンガー、バッド・ブレイクは、今や落ち目のドサ周りを続ける生活。何度となく破綻をきたした結婚生活や果てしなく続くツアーに疲れ果て、アルコールにどっぷり浸かる毎日を送っていた。かつての弟子トミー・スウィートが、金と名声を得たスーパースターとなったことにも苦々しい思いがつのる。しかし、その日暮らしの生活を送る彼の前に、シングルマザーである記者のジーンと彼女の4歳の息子が現れる。財産も気力も失ったバッドは、彼と純粋に向き合う親子との触れ合いを通じて、彼の中に潜む“荒ぶる魂(クレイジー・ハート)”に少しずつ希望がわき上がるのを感じ始める……。

(映画「クレイジー・ハート」作品紹介より)

1度は成功を収めた歌手である主人公は、その後、人気が低迷し、地方の小さな会場を営業して回る生活をしている状態だったが、新聞記者でシングルマザーの女性と仕事を通じて知り合い、彼女との交流を深めていく中で自分自身と向き合い、立ち直っていくストーリーとなっています。

主人公が置かれている状況

主人公のバッドは、営業先の地方でも知名度がある様子がうかがえるところから、昔はかなり売れた歌手だったことが予想されます。

これは、ウイスキーを買いに入った酒店の店主に声をかけられたり、ライブ会場(地方のボーリング場)でも一定の年齢層の女性に人気があるところからもうかがえます(しかも、主人公は女性から連絡先を渡されたりするくらい熱い眼差しで見つめられている)

ところが、現在では、生活に困窮するくらいの困難な状況に置かれています。

元は自分のバンドの手下だった若者が主人公よりも有名になり、かなりの売れっ子になっている状況も、主人公を苛立たせます。

私生活でも4度の結婚と離婚を繰り返していて、さらに酒の量も増えており、健康をかなり悪化させています。

能力があり、過去の栄光もあるが、現在は身を持ち崩した年老いた歌手、として主人公は描かれています。

そんな主人公を、地方の新聞社で記者をしている女性が取材に訪れます。

彼女は主人公と年齢差が(おそらく)30歳近くありますが、主人公が歌うジャンルの古い歌手を何人か知っていて、主人公との取材が弾んでいきます(主人公は初めから彼女に好感を持っていることが画面から伝わってきます)

その後、取材のやりとりを深める中で、2人は深い関係になっていきます。

折しも、主人公が苦々しく思っているかつての弟子のトミーから、コンサートの"前座"という形で仕事を共にすることになります。

主人公としては、トミーが売れっ子になっている現実を好ましく思っておらず、共演はしたくなかったのですが、お金とチャンスを得るため、自らのプライドを捨てて出演します。

その後、出演をきっかけに、トミーから曲の提供を依頼されますが、主人公はこれを一旦断ります。

コンサートが終わったあと、ジーンに会うため車を運転している途中、主人公は事故を起こし、ここから物語は大きく展開していきます(そのあとの流れは作品をご覧ください)

主人公が再起するきっかけ

主人公はその後、ジーンと交流を深めていく中で、自分自身と向き合うことになる事件に遭遇します。

その結果、主人公は生き方を変える決心をします。

主人公はアルコール依存症になっていて、それを克服しようとします(実際に克服します)

仕事にもきちんと取り組み、生活を立て直します。

主人公がそれまでの自堕落な生活から立ち直るきっかけとなったのは、明らかにジーンの存在でした。

そして、ジーンからの信頼を失ったとき、それを取り戻そうとするために、自らの生き方を修正しはじめます。

(このトラブルが起こる前から主人公がそれをしようとしている姿も見られますが、それをより真剣にし始めるのは、ジーンが主人公から離れていってからです)

良いものを持っていても活かせないのは何故か?

主人公は、歌手として高い能力を持っているものの、それを活かすことができていません。

その原因は、昔よりも売れない歌手になって困窮していることが大きいようです。

そして、酒浸りの生活を送っていることも大きな原因となっています。

しかも、かつて一緒に仕事をしていた自分の弟子とも言える若者の存在を疎ましく思ってもいます。

ここから考えると、主人公は明らかに現状に合わなくなったことから、私生活まで悪化させていて、素直にそれを改善することもできなくなっています。

確かに、主人公にとっては面白くない状況かもしれません。

それが改善できないことから、さらに面白くない状況が生まれている、という悪い循環に入っているように見えます。

好転のきっかけ

この状況が好転するきっかけは、主人公にとって大事な存在となったジーンの信頼を失ったことです。

失いたくないものを失い、それを取り戻したい、と切実に思ったということになります。

大きなモチベーションとなったのは、明らかにジーンの存在でした。

すべての始まりは心

作品中では、主人公が歌手として上手くいかなくなった原因は直接語られていません。

ただ、映画を見た印象では、主人公が好き勝手をし過ぎたことが、あらゆる場面で上手くいかなくなる原因を作っていたのかもしれない、ということは感じられます。

好き勝手、ということは、自分しか見えていなかった、ということです。

これは、ファンとの関係もそうだったのかもしれませんし、音楽仲間との関係でもそうだったのかもしれません(作品では直接的に語られていません)

その結果、アルコール依存症になってさえいます。

この状況を作ったのは、何よりも主人公の心がけにあったのかもしれません。

そして、縁あってジーンと出会い、生き方を見直すきっかけを得ます。

トラブルをきっかけに失いたくなかったものを取り戻そうと思ったことで、主人公は切実に状況を改善したいと思います。

やはり、状況を悪くするのも良くするのも、すべては心がけ次第です。

やり直すことはつらいこと

やり直すことは、精神的にかなり大変なことです。

過去に名声を得ていればいるほど、大変です。

実際に、この映画の主人公がなかなか現状を変えることができなかったのも、主人公が過去の自分(とその名声)から逃れることができなかったからだ、とも言えます。

それがわだかまりとなっているからこそ、かつての弟子の成功を祝うことができず、憎しみの対象にすらなっています。

やりなおす場合、最大のハードルはこの「わだかまり」です。

心は昔に置いてきてしまい、そこから現在を眺めて現状を残念に思うからこそ、心の中にわだかまりが生まれます。

これを解消するには、認められないものを認める作業が必要です。

主人公が捨てたもの

主人公は、更生するにあたり、酒を飲むことをやめました。

さらに、自らの名前も捨てて、本名に戻って自分を生き直そうとします。

主人公が捨てたのは、過去へのわだかまりであり、自分の過去です。

それにより、主人公は状況を回復します。

これを実行させたもの、主人公に生き方を変えることを決心させたものは、自分自身と向き合うということでした。

この作業ができなかったからこそ、主人公は60歳近くになる現在まで生き方を変えることができませんでした。

「世の中に合わなくなった自分を自分で認められなかった」からこそ、状況が悪くなることをどこかでわかりつつも、生き方を柔軟に変更することができなかった…

それは「自分を直視することになるから」です。

(そのとき、自分は現在におらず、名声を得ていた過去の時代にいる)

過去に置いてきた自分が、過去の良い時と比べて惨めな現在の自分を認められない・認めるのが怖い、と感じていて、そこから逃れられていない…

ですが、人はいまを生きている存在です。

いまこの時を生きながら、実際には生きていないようなものです。

そして、主人公が更生に至った原因は「現在を生きることを選択したから」です。

過去を捨てる決意も、その恐怖を乗り越えさせたのも、すべては目の前の自分をしっかりと見つめることができるようになったからです。

自分を生きる決心をするために必要だったのは「素直さ」です。

そこまで至るには、失われた自分をある程度回復する作業が必要で、それが主人公にとってはジーンの存在だったでしょう。

自分の価値を信じられるようになることが大事だ、ということでもあります。

それに気づかせてくれたのはジーンだった、ということですね。

人生をやり直すには?

この映画から人生をやり直すために必要なものを考えるならば、

  • 自分の価値を感じ、再確認する
  • 自分の現実をきちんと見つめる
  • 自分の過去を見つめる
  • 現実を受け入れる
  • 過去の自分と決別する
  • 自分の人生を生きる(過去ではなく現在を生きる)

これらの過程を通じて、人生で受け入れられないものを受け入れるために必要なのは、

  • それをしなければならないほどの不快な出来事・デメリットが迫っている場合
  • それをすることが喜びである場合

このどちらかです。

人生を受け入れるためには、誰かからの信頼や愛情が必要です。

まとめ|大事なものに気づき、自分自身を受け入れ、感情に素直になる

  • まずは大事なものに気づく
  • 自分自身を受け入れる
  • 自分の本当の感情に素直になる

これらができなくなっているのは、自分で物事の見方にフィルターをかけているからで、それを取り除くには、違う視点で物事を見つめることが大事です。

そのとき、それまで付き合いのなかった人から信頼や評価を得ることがよいきっかけとなることがあります。

また、自らの考え方を変えるために旅行に出かけたり、仕事を変えたり、引っ越しをしてみるのもよいきっかけになります。


(映画で主人公の人生が変化したきっかけも、新聞記者だったジーンとたまたま知り合い、彼女の信頼と愛情を失いたくないと切実に感じたからこそでした)

つらい現実を受け入れることは大変です。

ですが、乗り越えた先には「何か」が待っています。

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